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おっちゃん物想う

おっちゃん物想う

はぐれ道

田んぼを横ぎる鴨の親子。

一匹の子鴨が、蛙を見つけた。

けろっと鳴いた蛙を不思議そうに見る。

他の鴨達はおかまい無く進む。

ガッアと脅かしてみた。

素知らぬ顔をして泳ぎ始めた蛙。

親鴨が鳴き声で気付いた。

止まる行進。

蛙は子鴨の背中に回る。

首だけで追い掛けてみる。

蛙の泳ぐ方が早い。

親鴨が呼ぶのも気に成る。

蛙との追い掛けっこを始めてしまった。

親の声が穏やかだったから。

稲の深い所へ入り込む蛙。

くちばしで稲を揺さぶってみた。

先に行くよ、と他の鴨達は歩みを再開した。

親の声が気に成って、違う稲を揺すっていた。

するとタニシの大軍が現れた。

美味しい事を知っている。

そこで、蛙が邪魔をして、倒れた稲で隠してしまった。

オーイと先を行く親達を呼んでみた子鴨。

餌が有るよ、と。

だけど蛙は石でタニシを隠してしまった。

呼び戻され着いた頃には見当たらない。

があっ、があっ、があっ。

不満の声が上がった。

もうお止しなさい、馬鹿な遊びをするのは。

説教された子鴨。

しゅんとして最後尾に着いて行く。

そこへ尾っぽに飛びつく蛙。

子鴨は捕まえようとして、飛び跳ねた。

辛抱出来なく成った親鴨は飛び立った。

みんな着いて飛んだ。

尾っぽにしがみつかれてるから、飛びたてない子鴨。

蛙と奮闘している。

長引いてスタミナが切れた子鴨。

ふと見渡すと家族が居ない。

ちょっとした好奇心で、孤独に成ってしまった子鴨。

もう日が暮れたので見つけるのはあきらめる事に成る。

一人で寝床に成りそうな稲を探した。

又、蛙がちょっかいを出す。

鴨と蛙は相性が悪いのだろうか。

先に鳴いてアプローチしたのは蛙だった。

何も悪い事をしていない子鴨の独りぼっちの夜が始まる。

蛙は夜行性だ。

寝られなくなりそうだ。

寝てない子鴨は朝を待っていつもの餌場に飛んだ。

結局夕べは夜目の効かない子鴨はからかわれてばかりだった。

蛙はからかっているうちに、子鴨に蛙語を解らせた。

餌場に行っても家族は居ない。

物知りカラスに教えてもらう事にした。

すると、蛙語が話せるように成った君に、帰る場所はないよ、と答えたカラス。

君はもうみんなとは違うんだ。

違う世界で生きる道を選んだのは君なのさ。

親の優しさに甘える事が、君に辛い道を用意してたんだよ。

蛙は、ゲロゲロ、と鳴き、僕の案内はここまでさ、言葉は忘れて良いんだよ。

現実は違うから。

と、言ったと思ったら、大きなジャンプをくり返しどこかに消えて行った。

残ったカラスはもう黙ってしまった。

子鴨は、ゲロ、と鳴いてみたが、寂しくなって、空を見上げた。

蛙なんかより遠くまで飛べるさ。

もう餌も取れるさ、一人でも。

強がってみせる子鴨に、カラスは、君の弱さが困惑と苦労を、迎える原因だね。

君は盲目のような物さ。

やがてどこにも行けなくなるよ、僕は案内出来ないよ、と、飛び去った。

子鴨は、いたずらをして遊んだ兄弟を思った。

優しかった母を思った。

これからの自分を思った。

もはや夕日が照る様に成るまで、思い続けた。

赤く染まった空の下で、もう子鴨は独りぼっちだった。

満月の月だけが彼を見ていた。

はぐれ道はどこにでも転がってる物なのさ。













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